第4章 可哀想な子供
「なあ、灰原。オメー天査愛紗って奴を知ってるか?」
爆弾事件の後、阿笠邸を訪れたコナンは挨拶もそこそこに口火を切った。
問われた方の灰原こと宮野志保は明らかな動揺を見せる。
「その様子だと、知ってんだな」
「どうして貴方がその名を……」
あり得ないというように志保はコナンを見る。
天査愛紗は滅多な事では組織から出ない人間だ。
だから外部の人間がその存在を知る事はほぼ不可能のはず。
それなのに目の前の探偵は知っている。
「エレベーターで爆弾を解除した際にいたのは俺と高木刑事だけじゃねぇっつっただろ。他に2人いた。そのうちの1人が自分で名乗ったんだ」
天査愛紗ってな。
志保は頭の中でその名を繰り返す。
ただの同姓同名、それであればどれだけいいか。
「その人の他に無口、声の出せない男性がいた。その人が爆弾を解除したんだが、ありゃあどう考えてもその素養があるぜ」
「……外見はどうだったの?」
「俺と同じくらい、元の高校二年生の俺の方な……、それで顔立ちは整ってた。詳しく言うと……」
コナンが話す愛紗の特徴はまさに志保の知っている愛紗だった。
姉が死んだ後に仲たがいしたままの。
口を挟む事をせずに黙って聞く。
「それから爆発に巻き込まれて死ぬかもしれないって時にだいぶ、取り乱しな。アイリッシュの弔いに来たのに、自分達のためになってしまった。……シェリーにもあえねぇってな」
「っ!」
自分の名前が出てきて志保は驚く。
そしてどこかでほっとしていた。
あの時は、姉の死に動揺して酷い言葉を言ってしまった事を後悔していた。
もう顔を合わせる事はないだろうが、仲たがいしたままというのは気になっていた事だ。
向こうが自分に会いたがっているとわかって、向こうも怒っていないようだ。