第3章 おでかけ
「え?何かな?」
「……ッ!」
「もしかして爆弾?」
愛紗から離れる事が出来ないはずの世話役が駆け出す。
びっくりした愛紗だが、慌てて後を追いかける。
爆発音が聞こえたエレベーターに駆け寄る。
「止まってるみたい」
パニックになっている客たちをかき分けて、エレベーターの扉をこじ開ける。
「下の方だね」
階段が混雑しているのを見て、世話役は、エレベーターに飛び込んだ。
その姿を見て愛紗はエーと思った。
かと言って自分の力では同じように追いかけられる訳もない。
「しょーがないな」
仕方なく愛紗は込み合う階段から下に降りる。
話すことが出来ない世話役では、役に立たない。
「ごめんなさーい、急いでるの!」
ようやく目当てのエレベーターの前には係員らしき人物や大人がいた。
「アケミちゃん」
大人の女性が心配そうに声を出している。
「すみません、どうしたんですか?」
係員らしき人に声をかける。
「女の子が取り残されてしまっているんです。ここは危険ですから貴女も逃げてください!」
「?男の人は居ませんか?」
世話役はこのエレベーターに降りたはずだ。
なのに、なぜいないのだろう。
そう言うと愛紗はエレベーターの中を覗こうとする。
微妙な隙間だ。
これではもし世話役が居ても通れない。
「うわぁ、狭い」
「早く出てきてちょうだい、アケミちゃん」
「明美ちゃん?」
「ええ、あの子アケミと言うの」
女の子の母親であろう女性が答えた。
明美。
愛紗はその名前を反芻する。
シェリーの姉の名と同じだ。
志保ちゃん。
頭の中にシェリーの姿が浮かぶ。