第3章 おでかけ
以前、破壊されたとは思えない程、綺麗に元通りだ。
黒の組織によって木っ端みじんにされた窓ガラスも綺麗なものだ。
「何だか本当にパトカーが多いね。ちょっと物騒だよ」
世話役が花束とアイリッシュを持ち、2人でエレベーターに乗り込む。
警察が多い事を考えれば、コードネームを口に出すのは憚られた。
コードネームを言った所で警察は分からないだろうが、ラムからメールを貰った以上気を付けなければならない。
ジンからも注意されたが、愛紗はそんなに困った事なのかと、大して実感がわいていない。
危機感を感じずのんびりとしながら最上階まで上る。
「いい景色。でも夜の方が良かったかな」
のん気に景色を眺めていた愛紗は展望台をゆっくりを見て回る。
アイリッシュが見た最後の風景。
そう思うと感慨深い。
彼が死んだのは夜だったから、夜景を見たかったかもしれない。
けれど、夜景を見る事はかなわなかった。
夜の外出は許可が下りなかったからだ。
暗い街中では愛紗が迷子になるだおるというのが、理由だった。
「う~ん、お酒って置いていったら怒られるのかな。上から流しちゃおっか」
答えが返って来る事の無いのを知りながら、愛紗は話しかける。
悩んでいる中、ボンッ!大きな破裂音が聞かれた。