第3章 おでかけ
「お買い物しよう。花束とアイリッシュを買うの!」
クレープを食べ終わると、愛紗は歩き出す。
場所も知らないのに歩き出そうとするのを、世話役が止める。
愛紗からスマホを借りて、買い物が出来る場所を探した世話役は、一番近いショッピングモールに目星をつけた。
杯戸ショッピングモールに着いた2人は、目当ての物を探す。
どこに何が売っているのか分からない愛紗を世話役が案内する。
ふいに電話が鳴る。
世話役はスマホを慌てて愛紗に返そうとするが愛紗は懐からスマホを取り出した。
「はい、もしもーし!……え?……うん、うん……わかった」
「ジンからだった。色んな所に爆弾が仕掛けられてて警察がうろついてるから気を付けろって」
黒の組織としては警察に関わりたくない。
というのが本音であろうが、愛紗は特に気にしていない。
自分自身が悪い事をしているという自覚はない。
実際の所、愛紗が行っている悪事は、無免許の医療行為だけだろう。
それも問題だろうが、警察に捕まるとは思っていない。
だから少しパトカーが沢山見られてラッキーくらいな気持ちだ。
「あ、心配なの?爆弾ってどきどきするよね」
愛紗はのん気だ。
爆弾は恐れるべきものだとは分かっているが、自分が関わるとは思っていない。
危機管理が成っていない所は、黒の組織と言う守られた空間で過ごしてきた愛紗ならではだ。
緊急の手術はあっても、自分自身を危険な場所に身を置いた事がなかった。
味方であり続ける限り、組織は愛紗に優しい。
周りの人間がいなくなっても、自分自身は無事なのだ。
「怖い顔してるね。どこにあるんだろう、爆弾。もしかして解除出来たりとかするの?」
世話役は厳しい顔をして、頷く。
「でも、今日はアイリッシュの為に来たから。アイリッシュに挨拶が終わってからね」
それ程、興味のない事だ。
いつも世話をしてくれている男に感謝する気持ちもあるが、今日の要件はアイリッシュの弔いだ。
だからこそ、その予定は変更されない。
怖い顔をしたまま、愛紗に案内する世話役。
逆らう事は出来ない。
そうなるように、ラムに言われて愛紗がそのようにしたからだ。
世話役に出来る事も少ない。