第3章 おでかけ
元々、ずっと組織にいて反抗心を見せた事の無い、というかその考えすらない愛紗だ。
許可はすぐに下りたのだそうだ。
何も言わなくとも愛紗は世話役にぺらぺら話す。
世話役が言葉を発する事が出来ないのを知っている愛紗は、独り言にも似た事を話し続ける事がある。
テレビの中でしか見た事が無い光景を前に愛紗の気分は高揚していた。
嬉しさが顔に前面に出ており、大はしゃぎだ。
逸れないようにと、手を繋いで隣を歩く世話役も少し顔を緩めている。
彼にとっても世話役となって初めての外だ。
基本的に組織の施設の外から出ない愛紗はこれほど多くの人がいる場所は初めてだ。
だから時折人とぶつかりそうになりながら、世話役に補助されて歩いた。
「外ってこんなに人がいるんだね」
愛紗は辺りに興味津々で注意散漫になりながら、世話役に話しかける。
「あっ、あれ食べてみたい!」
クレープの屋台を見かけて愛紗は指をさす。
世話役は自分に言われているのを知っているから、愛紗を連れて行く。
「どれがいいかな~」
悩む愛紗だが、世話役は説明は出来ない。
四六時中共にいるが愛紗の好みを把握はしていなかった。
「んーと、これにしよ!」
のんびりと悩み、店員が若干イラついてた時だ。
アイスのみならずケーキやプリンまで入った豪華なクレープだ。
世話役はそれを頼み、料金を支払う。
受け取りまで世話役に任せ、愛紗はクレープをほうばった。
「甘ーい」
店の前にあった椅子座って食べるように愛紗に示す。
人波の中で歩き名ながらクレープを食べる技術を愛紗が持っていないのを知っているからだ。
嬉しそうに食べる。
機嫌がよさそうだ。
この間の事が無かったかのように、愛紗は元気そうだ。