第2章 人殺しの罪
「アイリッシュを送る人は全然いないのね」
コードネームを持つ幹部が、あれだけ派手な事をして殺された男。
そんなアイリッシュの葬式に参加するのは、愛紗とその世話役だけだった。
神父が進行する葬式は淡々と進み、より一層、愛紗の涙を誘った。
もっと好かれていたはずだ。
アイリッシュは。
それなのに、こんな事になってしまうなんて。
「うぅううう、アイリッシュ」
そんな愛紗を悼ましそうに世話役の男は見ているが、声はかけない。
ただ肩を抱いてやるだけだ。
あそこまで派手に殺す必要があったのだろうか。
焼かれたピスコ程ではないが、アイリッシュも酷い有様だ。
蘇生しようと試みた事もあり、ピスコのようにアイリッシュもまた眠っているだけのようだった。
裏切り者に組織は厳しい。
それは愛紗も実感している。
任務が遂行できなかった者にも。
アイリッシュを見てよりそれを実感した。
組織は非情だ。
ジンは冷徹な男だ。
それまでの裏切り者は、愛紗に近い人間では無かったのだ。
だからいずれ帰ってくるのだろうという希望的観測をしていた。
しかしピスコ、アイリッシュという現実を目の当たりにすると逃避も出来なくなる。
任務失敗でこれなのだ。
裏切り者にはもっとひどい事がされる。
FBIに通じていたとして殺された宮野明美を思い返す。