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黒の組織の天才医師()

第2章 人殺しの罪


愛紗はいつも与えられた部屋で待機している。
いつ電話が鳴るとも限らない。
鳴れば、すぐに手術だろう。

ならない電話を待つ間、考え事をしていた。

愛紗は分かり始めていた。
シェリーはもう組織に戻ってくる事が無いのだと。

見つかったら、アイリッシュのように殺されてしまう。
そんなの嫌だ。

ではもうシェリーに会えないんだろうか。

世話役が近寄ってきて、そっとケーキと紅茶を置いた。
また誰かが買って来てくれたのだろう。

いつかシェリーと食べようと想像して、食べてきたケーキだが、そんな日は来ない。

ケーキを見て、とめどなく涙を流しだした愛紗に世話役が慌てる。
それでも涙は止まらず、目が溶ける程に泣いていた。




電話もならず、ただ愛紗の泣き声だけが響く部屋に唐突に侵入者が現れた。

ジンだ。

「テメェはまた泣いてんのか、ピンクレディ」
「……ジン、お願いがあるの……」

いら立ったように愛紗の髪を掴んで顔を上げさせたジンを振り払う事もなく、赤くはれた目で訴える。

「シェリーを殺さないで」
「馬鹿言うんじゃねぇよ。裏切り者には死だ」
「でも、例外もいるでしょう?」

ジンが視線を外す。

「俺は疑わしければ全員殺すぜ。まあ、シェリーは確定だがな」
「酷い事言わないでお願い、何でもするから!」
「何でもねぇ?お前出来る事すくねぇじゃねぇか」

それは事実だ。
実際にお前は何が出来るんだと言われたら愛紗は答えに困ってしまう。
ジンが裏切り者に対して強硬派なのは知っていた。
だからジンが殺そうとしなければ、生きて連れて来る事も出来ると思った。


「あんまり、出来る事ないけど、好きにしていいから……!」

そう言って、着ていた服をまくり上げる。
白いレースのブラジャーを纏った柔らかそうな胸が露わになる。

「それもソイツに着けてもらってんのか?」
「うん」
「へぇ、ピンクレディの世話をするのは面倒だが、な」

ブラジャー越し強く胸を掴まれ、痛みに愛紗は顔を顰める。
だが、ジンは意地悪く笑った。

「あの方もシェリーに価値を感じちゃいねぇよ」

目の前が真っ暗になる。

口角を売り上げて愉快そうに笑うジンを見て、分かった。
シェリーとの再会は悲しいものになると。
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