第2章 人殺しの罪
他の構成員とは異なり、組織の施設から出る事は無く、外部の人間と接触する機会が極端に少ない。
殺しに関連する仕事は愛紗の範疇ではない。
任務で傷を負った構成員の治療、または病に倒れた構成員の治療。
殺す事では無く、助ける事を仕事にしてきた愛紗には人の殺めたという事実は堪える。
ラムから非は無いと宥められても受け入れられなかった。
だってアイリッシュは裏切り者なんかではない。
死ぬ必要だってなかったはずだ。
殺すのではなく撤退するのを助けてあげればよかったのに。
その思いが愛紗にはある。
ヘリから銃撃したのなら、そのヘリに乗せてあげればよかったのに。
現場の事は愛紗は分からない。
それでも殺さなくとも良かったのではないかと思ってしまう。
ピスコだって失敗はしたかもしれないが、死ぬことは無かった。
任務を遂行できなかった組織の人間は他にもいた。
決定的な写真を撮られてしまったとはいえ、組織の力を使えば回収して、あの失敗を無かった事に出来たはずなのに。
ジンに殺されてしまった。
元々愛紗はジンの事も嫌いでは無い。
けれどピスコを殺したジンを、好きにはなれなかった。
アイリッシュの身体を撫でて、愛紗は涙を流した。
ここから先は、綺麗にしてあげる行為だ。
ストックの臓器を使ってしまったから、また作らないと。
ああ、アイリッシュは死んでしまったからその必要な無いのか。
愛紗は悲しみに鈍った頭を叱咤する。
涙を世話役に拭ってもらい、アイリッシュの遺体に愛紗は新たな作業を始めた。