第2章 人殺しの罪
キャンティの馬鹿。こんなに打ち込むなんて。
アイリッシュの遺体を前に、愛紗はそんな風に考えていた。
既に死後数日は経過している。
派手に殺しはしたが、警察から組織の人間が奪い返す事が出来たのは運がよかった。
アイリッシュが死んだと聞いた時は何かの冗談だろうと思ったが、凄惨な殺され方をした本人を見れば納得してしまう。
どこかでぼうっとしながら、愛紗は黙々と作業を続けた。
これはあの方からの了承も得ている。
弾丸を除去し、痛んだ身体を縫い合わせる。
損傷が激しい物はストックされたアイリッシュ新しい臓器と取り換えた。
これで動き出したら、新しい事を試せたのに。
アイリッシュがこんな事になってしまったのには自分の責任もあると感じていた。
もし、あの時ピスコを助ける事が出来たらと愛紗は思うのだ。
あの方からも否定されたそれを、実行できる訳など無いのに。
薬物を投与し、電気ショックを与えた。
そして世話役の男が心臓マッサージを繰り返すが、アイリッシュの身体に新しく埋められた心臓は動かない。
駄目か。
アイリッシュは死んでしまった。
この結果では、受け入れざる負えない。
もう猶予の時間はとっくに過ぎてしまった。
そもそも愛紗が対処可能な時間を過ぎてからアイリッシュの遺体は運ばれたのだ。
それでも続けたのは、アイリッシュの死を受け入れられたくないからだ。
自分のせいだと思ってしまう。
自分が殺した。
その考えが愛紗の頭に付きまとう。
医者である愛紗は今まで人を殺した事は無かった。