【HUNTER×HUNTER】pleats-プリーツ
第144章 144話
クラピカの見開いた目が数秒固まった。
「これは、まさか…でもどうして」
「うっ…、ズズッ…、ひっ……昨日のっ…、オーク…ッオークションはっ…」
「分かった、もう話さなくていい…一旦そこのベンチに座って落ち着いてくれ。」
泣きすぎてうまく話せない私の腕を支えて、ベンチへと座らせるクラピカ
流石に渡された物が物なので、彼も少し緊張しているような面持ちだ。
「これは奴等から奪ったのか?」
問いかけに首を横に振る
私が昨晩のオークションが偽物であるという話を何とか伝えると、クラピカは眉間にしわを寄せて困ったように紙袋を見つめた。
「気持ちは嬉しいが、私の雇い主が偽物の眼を落札してしまった今
立場上、これを所持しているのは非常にまずい…。」
「あっ…、そ…そうですよね…。すみません私、考えがそこまで至らなくて…。」
「いや、この眼だけでも盗品の中から救い出してくれて良かった。それは感謝している
だか、手に入れてしまったとなると安全な場所で保管しなければならないからな…」
そうか…この眼は遺体の一部であると同時に、とても高価な品物なんだ…。
それを手に入れるということは、狙われるリスクも付きまとうことになる。
「それなら...もし良ければですけど
しばらくの間、私の部屋でお預かりしましょうか?」
「名前の部屋…?」
「はい、実は私…ゾルディック家の地下深くに部屋を与えられているんです。
通気口以外は完全に埋め立てられていて、窓も扉も無い変な部屋なんですけど…」
口に出して説明すると、我ながら奇妙な所に住んでいるな…と感じ、紹介する口調に照れ笑いが混じる。
あははと笑いながら「ある意味、世界で一番安全な場所かもしれないですね。」と言って片目でクラピカを見れば、思いのほか彼は真剣な表情で「それしかないな…」と返してきた。
「え!ほ…本当にいいんですか?!」
「なんだ、世界一安全な場所じゃなかったのか?」
「いや!場所は安全ですけど、でも…。わかりました、金庫を用意してそこに保管します…!」
破損させたり、無くしたりしたら冗談じゃ済まない。
クラピカに渡してホッとしたのもつかの間、緋の眼は再び私の手元に帰ってくることになった。