第137章 137話

後に、マフィア達の間で都市伝説となったヨークシンシティの逸話がある。

『黒髪の天使』

そう聞けば、マフィアンコミュニティーで知らない人間は居ない程の有名な都市伝説


その天使は黒い服を着た黒い髪の女の姿をしていて、触れられた人間は瞬く間に真っ白な空間へと飛ばされ、更生を強いられると言う話だ。
飛ばされたヤツらは、直前まで死の恐怖を感じていた為か、その多くが自分は死んだものだと思い込み、その場所を天国と地獄の狭間だと本気で信じたらしい。

”悔い改めてください”

そんなメッセージと共に、真っ白な部屋には生きるための物資が整っていた。
誰も争わず、誰もが祈っていた。

組の頭を張っている程の人間ですら、人が変わったように救いを求めていた。



オレもそうだった。



オレの名前はビーン
ろくな人生じゃあなかったが、死神の顔を見た時、失うには惜しいと思った。

そして今では救われたと信じている。

白い部屋から解放された後、マフィアンコミュニティーは足を洗う人間が多発し壊滅状態に陥った。
命が助からなかった人間も少なくない襲撃の最中、自分が助かったのは神からの啓示とさえ思った。


あの女は天使だったのか…

あの場所はなんだったのか…

今となっても、真実は定かではない。