【HUNTER×HUNTER】pleats-プリーツ
第87章 87話
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「お前、本当のところケータイなんて口実だろ」
「えっ? 」
ドスっと着席したと同時に、キルアはそう呟くように言った。
別に聞こえなかったわけじゃないけど、返答に困りつい聞き返してしまう。
「あいつ等のことだろ?殺しはしねーよ。
大丈夫だっつってんのに、過保護なやつ・・・未来知っててなんでそんなに心配するんだか」
言葉に詰まって黙っていると、間を空けずにそう言われた。
肘を着いた掌に顎を乗せて、キルアはぷいっとそっぽを向く。
悟られまくっていることに動揺しつつも、私は丁寧に言葉を絞り出そうと、浅く息を吸って話し始めた。
「そう・・・そうなんだけど・・そのことじゃなくて・・
上手く言えないんだけど・・。
わたし、キルアにはもっと普通の男の子で居てほしいっていうか・・・」
「は?」
キルアの予測とはあまりにかけ離れた発言だったらしく
彼は粗末な疑問符を一言発した後、私を見て固まってしまった。
それでも私には他にどう言っていいのか分からず、思ったまま言葉を続けるしかない。
「普通の、ゴンとズシと同じ普通の男の子なんだってことを知ってほしくて」
「普通・・・?オレがどんな家で育ったか知ってんだろ?」
「うん、そうだけど・・ キルアが何をしてきたとしても・・
今のキルア自身は、自分の意志で家を出て、今わたし達と居る」
怪訝そうな顔のキルアは私の二の句を待っている・・・
突然のことで、上手く言葉が出てこないなりに私は続けた。
「こうやって街で一緒にお買い物をしたり、美味しいケーキを食べたり
皆で一緒に修行したり・・・楽しいよね。」
「はあ、まあ・・・楽しいけど」
「同じ目標を持った友達と一緒に何かに励んだり、寄り道したり、買い食いをしたり、遊んだり
もう昔のキルアはここには無い・・・。
キルアらしく新しい毎日が送れてる、だから過去の自分に囚われない様になったらいいなって、余計なお世話なのはわかってるんだけど・・。」