第1章 出会いは突然に
そして突如襲ってくるのは激しい目眩と眠気。
「う、わ。」
へたへたと崩れるようにその場にしゃがみこむ。
あ"ー……そういえば最近寝不足だった……。
「!ちょ、大丈夫!?」
斜め上から降ってくる自分を心配するユリの声。滲み出る不安を払拭させたくてヒラヒラと手を振る。
「へ、へーき。」
何とか立ち上がろうと思い、私は重たい腰を上げようと足に力を込めた。
けれどここ数日の徹夜。
先程まで走っていたということ。
思ってたより大きいハイキューが無いというダメージ。
試験明けの私には重なりすぎた物がひとつひとついつもより思い気がして。
「っ……。」
ダメだ……足に力が入んない。
「立てる?か、肩かすよ?」
慌てながらユリは私の背中をさする。
テンポよく撫でられる暖かさは気持ちを落ち着かせてくれるものだった。
早く立たなきゃ、帰って布団の中で寝た方がいい______……。
そんな風に思ったその時、男らしいよく通る爽やかで甘い声が響いた。
「大丈夫ですか?」
ずきずきと痛む頭を抑えつつ、声の降ってきた方を見て私は苦笑いを浮かべる。
ボヤボヤとしている眼鏡を忘れた私の視界は、頭痛のせいかさらに揺れていて。
「平気、です。お気遣いどうもありがとうございます。」
何とか返事を返せば、逆に声がか細くて心配されたのか、彼はその場にしゃがみ私を覗きこむ。
ふわりと香ったのは、柔軟剤の匂いだろうか。
存外彼の方もラフな服装をしているが、今の私の格好を見られるのは抵抗があった。
だからかつい見られないように視線を反らし、自分の膝に顔を埋める。
「大丈夫?」
ユリはそんな私の気持ちを察したのか、再度私に先程とは違う意味で問うた。
そして私が無反応なのを確認し、彼の方を見て言葉を放つ。
ユリの長い睫毛は震え、射抜くような視線が彼を襲っているに違いなかった。
「彼女は私が見ますから、お気遣いなく。お会計でしたらもう一人奥に従業員がおりますので、呼んでくださると有り難いです。」
模範解答のような答えを淀みのないはっきりとした口調で紡ぐユリ。
鈴のように明るい声は他人の耳には聞き取りやすく、意思のある声は拒絶を表したように聞こえただろう。