第18章 *猫と私③
「ひ、さしぶり…」
「もしかして逃げようとした?」
「えっ!?して無い!!」
すると、クロは片眉を垂らして笑う。
「嘘付き。お前は分かりやすいんだから、下手に嘘付くな」
そう言って私の頭に手を伸ばすも、すぐにその手は引っ込んだ。
「そう言えば研磨と付き合い出したらしいな。なーんで俺に一言無いわけ?」
「え?あ、うん。ごめんね…」
「嘘、嘘。俺に言いづらいわな。別に気にしてねーからあやねも普通にしてろ。それに、今は俺も女いるから!」
そう言っていつものニヤリ顔を見せるクロに少しだけホッとした。
もう誰かいるなら大丈夫かなって。
「さすがクロだね」
「だろ?俺モテモテなんでね!」
「自分で言うなーって!」
2人でふざけるの久しぶりだな。
そう思ってるとクロが自分の傘を手にする。
「もうすぐ研磨来るだろうから先に帰ったって言っといて」
「えっ!自分で言いなよ」
「バカだな…久しぶりに会えんだろ?」
クロを見ればすごく優しい顔で笑ってた。
「ここは素直に俺の言う事聞いとけよ」
「……クロ、ありがとう」
「おう、んじゃな」
傘をさしてクロが雨の中帰る後ろ姿に私はもう一度大きな声で『ありがとう!』と伝えれば、こっちを見る事無く片手だけ挙げひらひらと揺らすクロ。
「…本当、クロはかっこいいわ」