第23章 おまけ物語
「悪い…俺帰るわ」
「え…クロ??」
荷物を手繰り寄せて立ち上がろうとした時、あやねが俺の手を握ってきた。
俺は冷めた気持ちとは裏腹に暖かいあやねの手に後ろ髪が引かれてる。
「クロ、まだ一緒にいたい」
ズリィな。
散々塩対応だったくせに…。
「そんな挿れて欲しいわけ?」
強がりな笑みであやねを見下ろすと、あやねは頭を傾げて憎らしいほど可愛い顔で笑ってた。
「好きだからに決まってんじゃん」
あやねはさらりと欲かった言葉を言う。
「まぁ、こんな状態ならクロがそう言うのも分かるけど。一緒にいたいのはクロの事が好きで離れたく無いから」
どうすっかな、目頭がスゲー熱い。
思わず手の甲を口元に持ってって必死に目から溢れそうなもんを堪えてた。
ずっと、ずっと…言われたかった言葉。
俺はそのままあやねを勢い良く抱きしめれば、あやねからも腕を回される。
欲かった言葉は俺が思ってた以上に染み渡っていて一言、陳腐って思うかもしれないが幸せだった。
「あはは、クロ泣いてるの?」
「…うるへー。誰のせいだよ」
「私?」
「そうだよ」
更に抱く腕に力を入れると、俺の頭を撫でるあやね。
「クロ…大好きよ」
本当…調子狂うわ。
こんなにもあやねの一言一言に気持ち揺さぶられて…。
「クロ??」
腕を緩めあやねを見れば昔のあやねと重なって見えた。
あの誰もいない夕焼け色の教室、勢いで告白した時のあやねに。
喉から手が出るほど欲かった女をやっと俺だけのものに出来たって。
今はそう確信できる。
「あやね…昔も今も、ずっと愛してる…」
【完】
桜海