第16章 猫と私①
「はぁ、はぁ、研磨、いらっしゃい!」
「…ちゃんと誰か確認しなって前も言ったけど」
「あっ!!ごめんなさい…」
「今度からちゃんと確認してよね」
「…はい」
シュンと頭を下げるあやねにおれは一瞬ためらったけど、柔らかな黒髪に触れ撫でるとあやねがすぐ顔を上げておれを見るからなんか照れた。
「研磨…」
「あやね目悪いの?」
「あぁ、メガネね。普段はコンタクトなんだけど今日は目の調子あんまよく無くて…」
「初めて見たけど、メガネも似合う」
おれがそう言うとあやねは嬉しそうに微笑んで『ありがとう』って部屋の中に入れるようにドアの横にずれた。
「中入って、ちょっと部屋散らかってるんだけど」
「ありがとう。大丈夫、おれ気にしないから」
「だといいけど…」
不安そうな顔をさせるあやねがなんだか面白くて笑うと『笑わないで!』とか言ってうろたえて新鮮に感じ、部屋に入ると確かに前回に比べて物がたくさん出てた。
「あんま見ないでね。恥ずかしいので…」
「あやね…」
おれはあやねの手を握ると少し強引に引き寄せ抱き締める。
「おれ、あやねの部屋見に来たわけじゃないから大丈夫。あやねも今はおれだけに目を向けて」
「!!…研磨ってサラリとそんな事言えるんだね」
あやねを見るとほっぺが赤くなってる。
おれはあやねを抱く腕を解くとあやねのメガネを外す。
「あやねだから…ねぇ、またキスしたいって言ったらしてくれる?」
ちょっとねだるように頭を傾げてみれば、あやねの目が輝いて口に力が入るのが分かった。
今の作戦成功したかも。