第16章 猫と私①
「研磨は優しいね…もちろんいいよ」
微笑むあやねの『研磨“は”』って言葉に引っかかるのはきっと、無意識に比べる相手が“相手”だからなんだろうな…。
おれはあやねの唇に軽く触れ、ゆっくりとあやねの唇の形を知るようにゆっくり軽いキスを何度もする。
啄むキスをしている間も頭の中にはあやねとクロの姿が浮かぶ。
はっきりとは聞いた事の無い二人の関係。
おれの知らないところでもしかしたらって考えた事が無いわけじゃ無いから…だから些細な事に引っかかって嫉妬してるんだろうな。
付き合ってすぐなのに、自分の物になった瞬間あやねにした事全てに嫉妬して、モヤモヤしてくる。
人を好きになるってメンドくさい…。
メンドくさいって分かってるのに、自分じゃどうにもならないから“好き”って感情は凄いな。
「…研磨」
「あやね、おれだけ見て…」
「んっ…見てる、よ」
荒くなってくあやねの呼吸に、おれは変な優越感を感じ軽いキスだけであやねを離す。
名残惜しそうに潤む瞳がおれの顔から離れず、あやねの頬は更に色を濃くしていた。
「あやね、もしかしてもっとして欲しい?」
「えっ!?」
あやねのメガネを近くにあるテーブルに置くとおれはあやねのベッドに座る。
「もっとして欲しいならここ、来て…」
おれのすぐ横を軽く数回叩くと、モジモジとするあやねがおれを見て『意地悪…』とか言って横に座るとあやねからキスをされた。
触れるだけじゃ無い、初めてする舌を絡める深いキスにどんどんと膨らんでいく男としての欲。
唇が離れ、いやらしさが増すあやねの濡れた唇。
あやねが今すぐ欲しいな。って言ったらどうなるかな。