第16章 猫と私①
おれは家に帰ってすぐ、あやねに電話を入れた。
『ねぇ、今度こそデートしない?』
「うん。いいよ」
『やった!じゃあ、予定空いてる日メールしてね』
「分かった」
スマホの向こうであやねが『またね』と一言で通話が終わる。
必要な会話だけで、あまり“恋人同士”を感じる暇がなかった。
おれはベッドにうつ伏せると枕に顔を埋める。
「あやねが彼女…」
声に出してもまだ実感が無いのに、あやねの顔を思い出すだけで心拍数がどんどん上がっていく。
好きって感情は凄い。って改めて感じているとスマホが鳴る。
スマホを手に取り見ればあやねの名前。
俺はすぐに通話を押して耳に当てると『あ、け、研磨大好き』と恥じらいを含ませた声が聞こえて俺は自然と笑顔を浮かべていた。
「あやね、ちゃんと相手確認してから言った方がいいよ」
『えっ!?は、恥ずかしいのを我慢して言ったのにそれ!?』
おれから返ってくる言葉が違ったんだろうけど、スマホ越しに感じるあやねに、おれの心が暖かくなっていくのを感じる。
『研磨聞いてる!?』
「うん…」
『なんかごめんね…これ言いたかっただけなの。じゃあ、またね…』
俺に言う為に連絡くれたんだって思うとすごく嬉しい。
「あやね…」
『うん?何?』
「俺も好きだよ」
『えっ……あ、あぁうん!!私も!!』
「ははは、あやね慌てすぎ」
『だって…どうしよう。凄く嬉しい…』
スマホの向こうにいるあやねが今、どんな顔でいるかが浮かんで来ると凄く会いたくなる。