第16章 猫と私①
すると、クロがおれの横に来ていつものように首に腕を回してきた。
「…重い」
「ははは、ったくいい加減慣れろよ!」
「重いものは重いんだって」
「だから…慣れろよ。“これが新しい俺達”の関係なんだ」
思わず目を見開いていた。
おれが言いたくても言いにくい事、クロは分かってくれてた。
「俺に気を使う必要はねーの!!分かったか!?」
「分かった」
「そっ!ならもっかい聞くけどよ、嬉しくないのか?」
これが新しい俺達。
その言葉がどれだけおれの心を軽くしたか、クロはいつでもおれを引っ張ってくれる。
だから…もう言いたい事言わせてもらう。
「凄く嬉しい。クロでも、もうあやねを渡さないから」
これだけは譲れない。
そう伝えると、クロがニカッて笑っておれの肩を優しく数回叩いて離れた。
「そりゃそうだ。あんな良い女手放すわけないよな」
クロは『それが聞けて良かった』って安心するように言うと、おれの教室を出て行く。
おれはクロの後ろ姿を見送ると、さっき来たあやねからのメールをもう一度見てから『後で電話する』とメールに打ち込んで返信を送った。