第12章 猫⑫
すると、誰もいない事をいい事に先輩は力任せに私を壁へ押し付けた。
背中に痛みを感じると、目の前には先輩の顔がありすぐに顔を背けて逃げようとするが、先輩はそれを許さないとばかりに私の両手首に力を入れて握りだしたのだ。
「っ!!痛い、です…離して…」
「やーだ。あやね明日オレに付き合えよ…」
「嫌です」
「あっそ?じゃあ、このままオレの好きにさせてもらうけど?」
「何がしたいんですか!?」
横暴な態度に腹が立ち睨むけど、先輩はいやらしく笑う顔を崩す事無く私を解放した。
手首に残る痛みが私を支配し、その痛みを取り除く為に痛む部分をさすると、先輩は私のスマホを取り上げる。
「あっ!!スマホ返して!!」
「明日付き合ってくれたら返すよ〜!!」
「なっ!!本当に困るので止めて下さい!」
私が先輩の持つスマホを取り返そうとするが、先輩は返してくれなかった。
「んじゃ、明日駅前に11時に待ち合わせね〜!来ないとどうなるか考えろよ??」
「くっ!!!卑怯者!」
「はいはい〜!」
先輩は逃げるように私の前から消えた。
本当に最低……最悪。
私はその後も先輩を探し回るが、先輩の姿はどこにも無く、レポートどころではなくなり明日をどうするかを本気で悩んだ。
いっその事無視するかな……嫌、先輩の事だきっと何かしてくるだろうから無視は得策では無い。
この事研磨に言っとく方がいいかな…でも試合だしな。
クロ………も同じ。
私は大きな溜め息を吐き出すと重い足取りで、荷物を持ち家に帰る事にしたのだった。