第10章 猫⑩
部活が終わって気だるい身体で向かった先は、幼い頃に行った事のある家ではない……あやねだけの家。
クロは知ってるけど他のメンバー、特にリエーフはしつこく『どこ行くんですか!?』ってにやついて聞いてきてうんざりしたけど…それだけおれが普段と違うからなんだと思う。
違うって自分でも分かる。
本気だから。
おれは電灯の明かりが点き始めた、初めての道を歩いて行く。
あやねの家へ向かうその道は初めてなのにどこにあやねがいるか分かるように、迷う事なく足は進む。
二階建てのグレーっぽい色をしたアパートが見え、あのアパートの二階、はじの部屋があやねの家なんだって思うと、歩く足の速度は自然と早くなっていた。
アパートはきれいで、女の人が好きそうな感じ。
あやねの家の前に着くとインターホンを押す。
あやねの声が中から聞こえるとすぐにドアが開いた。
「はーい」
「…あやね、ちゃんと誰か確認してる?」
「えっ!?あ、研磨…早かったね」
この感じだと確認しないで開けたんだな。
「変な奴だったら危ないから確認しなよ」
「あはは…うん、そうだね」
ぎこちない笑顔で笑うけど、緊張してるのが分かる。
あやねがおれに緊張してる…正直おれもだけど、あやねはする必要ないんじゃない?あ、もしかして……。