第10章 猫⑩
「あやね、おれが何かするかもって思ってる?」
「へぇっ!?何で!?そんな事思ってないからね!?」
「……安心して!あやねに触れるような事はしないから。入ってもいい?」
「なっ!!そんな事心配してないよ!?研磨は変な事しないって分かってるからね!?」
すごい安心してる事が分かったけど…男としてそれはどうなんだろ。
男って意識されてないのかもしれない。
でも、それなら意識させればいいだけだけど。
家の中に招き入れてくれるあやねの横を通り部屋へと入る。
きれいに片付いてる部屋は思ってたより荷物が少ない。
あやねが小さめのテーブルの前にクッションを置くとその上に座るように言われた。
おれは言われた通りにそこに座る。
ぱたぱたと足音を鳴らして動くあやねは何だか可愛かった。
「研磨何飲む?」
「いらないから大丈夫」
「そう?飲みたくなったら言ってね」
あやねが自分用の飲み物を持って来るとおれの前に座る。
「なんか研磨が家に来るの珍しいよね!」
「そうだね、あやね…」
日常の事を話す為にここにいるんじゃない。
あやねのどこか落ち着きのない雰囲気を気にしつつ、おれは口を開いた。
「ずっと、クロとあやねは両想いでおれはいてもいなくても関係無いって思ってた」
「け、ん磨??急にどうしたの?」
まあ、そう思うよね。
でも…大事な事だから。
「聞いて….おれ、二人の邪魔になりたくなかったから、あやねとは距離置いてた」
「………」
「でも、ずっとあったんだ」
不安のような色を見せるあやねの瞳を見つめ全てを話した。
「あやねを想う気持ちが…」
「え…それって…」
「前に言ったよね、あやねは誰を見てるかって?」
「うん……」
「おれはあやねを見ないようにしてずっと見てた。あやねが好きだから」
目の前で目を見開くあやねの顔が、おれの言葉を理解すると共に赤く色づいてく。