第8章 *猫⑧
「は、はい!」
『“はい”じゃ無いよな!!?いったいどんだけ待たせんだよっ!?つか、充電しとけ!!』
「ごめんね…私から時間作るって言ったのに。スマホも放置してた。」
『放置し過ぎだっ!!心配だってすんだから、充電はマジでちゃんとしとけよな』
「うん、クロ…ごめん」
電話の向こうで大きな溜息が聞こえると、突然家のチャイムが鳴った。
「あっ、ごめん。誰か来たみたいだからいったん切るね!」
『おい!まだ話しは…チッ!仕方ねー!すぐかけ直せよ!!』
クロとの電話を切って急いで玄関に向かうと宅配業者だった。
母親からのダンボールを受け取り、ドアを閉めて散らかる部屋でダンボールを開く。
おばあちゃんが住む他県に今はいる両親からの差し入れがダンボールにぎっしり詰まっていた。
リフォームもおばあちゃんと一緒に住む為のものだから両親も期間限定の他県住まい。
特産品の珍しい食べ物をを定期的に送ってくれるのだ。
私はダンボールに詰まっている食料品を冷蔵庫に入れていく。
正直食料品はかなり助かる。
「これだけあればしばらくは買い物しなくてもすむかも…」
冷蔵庫に入れる食料を手に持ち、遠くにいる両親を思う。
自分が何故この場所から離れないのか、もう一度考えているとまたチャイムが鳴った。
私はさっきと同じ様に声をかけてからドアを開くと、目の前に赤色が広がった。
「ちゃんと誰か確認しないと」
聞き慣れた声、見慣れた赤色。
「俺だって気付か無いで開けちゃうぜ?」
いつものにやけ顔で私を見下ろすクロがそこにいた。