第7章 猫⑦
何か似た覚えのあるセリフだな。
涙目になる女に自分を重ねる。
あやねも俺の事、こんな風に思ってんのかね。
うざったいって。
「2番なんていい事ないぜ?」
「それでも!!それでも、先輩といれるならいいんです…」
俯く女は、そうしてるとあやねを思わせる部分があった。
顔も身体も悪くない、俺を1番に見て好きだって言う女にやっぱ自分を重ねてる。
「先輩のためなら何でもします…先輩が望むなら身体だって……」
「へ〜、そこまでして俺の近くいたいわけ?俺は他の女が好きなのに」
「…先輩が好きなんです」
震える声で俺を好きと言う女が哀れに思えた。
「はぁ。君さ、すんのは初めて?」
「えっ?あ、はい…初めて、です」
初めてか…。
そうじゃないなら抱いて終わらせようと思ったが、無理だな。
「悪い事言わねーから。初めては自分を大切に想ってくれる相手としな!じゃあ俺行くから」
行こうとする俺の背中の制服を女が掴んで俺を止める。
すぐに俺の前に来ると、女は自分の胸に俺の手を当てだす。
手のひらには柔らかな胸の感触が伝わり、おさまっていた欲をくすぶる。
「誘ってんの?」
「は、初めてだからって切り捨てないで下さい!!先輩のためなら何でもいいんです!」
やっぱ、俺に似てんだなこの子。
身体で相手の心を繋ぎ止めようとして、自分の心にあいた穴埋めようとするところとか、そっくりだよ。
「俺、好きな相手でも優しくしてやれないけど?それでもしたい?」
あやねにだって、自分の欲を思いっきりぶつけてんだ。
初めてだからって、好きでも無い相手に優しくしてやれる気がしない。
「したいです!」
「付き合いはしない。それでもいいなら一度だけ相手するけど、忘れんなよ?俺はあいつが好きなんだって」
「はい…」