第7章 猫⑦
せっかくあやねに会えたのに、チャンスをみすみす手放した。
仕方無いが、次に会う時まで保つのか……あやねに触れて欲情した俺、よく我慢出来たよ。本当に。
部活の後でよかった。
きっと、部活してなかったら襲ってる。
監督と話し終えた俺は、着替えを済まして学校を出ようとしていた。
少し先に見える黒髪の女に一瞬高ぶるけど、それがあやねじゃ無い事に気付くと鎮火したように気持ちも萎えた。
その女が俺に気付くと『黒尾先輩!』って告白でもしそうな雰囲気で呼ばれる。
「んっ?何?」
「あ、あの、先輩はその…」
もじもじとするその女をよく見ると、さっきあやねと一瞬にいた女だって気付く。
あやねの知り合いって感じじゃないよな。
疲れた頭ではあまり回らないようだ。
とにかく早く帰りたい。
「せ、先輩はあの人と付き合ってるんですか?」
「あの人?あー……付き合って無いけど」
「本当ですか!?はぁ〜良かった!!」
「でも好きだよ」
「えっ!?………そ、うですか」
「そっ!じゃあ、俺もう行くから気を付けて帰んな!」
その女に情けをかける気なんて無い。
早急にこの場を離れたかったのに、俺の制服を掴まれた。
「何?」
「あ、あの!!それでも構いません!!2番でもいいんです!だから、先輩の近くにいさせてもらえませんか!?」