第6章 猫⑥
後ろを見ようと振り返れば、クロに腕を掴まれ強く引っ張られた。
その勢いでクロは私の後頭部を手で抑え思いっきりキスをしてきた。
あまりにも突然の事で抵抗したが、がっちり抑えられた私はクロから受ける激しいキスに抗えなかった。
「んぁっ、ふっ…んっ…やぁっ」
「…………」
やっと離された私は息苦しさから慌てて呼吸をしクロを睨む。
私が睨む事などお構い無しに頭を撫でるクロは、私の髪をすくい取りその髪を口元へと運ぶ。
「偶然でも、会えて嬉しいなんて俺の気持ち。お前には分からないだろ?」
自分の髪に唇を落として言うクロがすごく色っぽくて、私は顔が熱くなるのが分かった。
「ちょっ!や、止めてよ…」
髪をはらってクロから少し離れる。
いまだに熱い顔は、辺りが暗くなった景色に溶けてクロに分からない事を願う。が…。
「あれ?もしかして俺に惚れた??顔真っ赤にさせてかわいい〜!」
「なっ!!違うから!!勘違いだけは止めて!」
「あはは、何ムキになってんだよ?俺ともっとすごい事してんじゃん?」
意地悪く笑うクロに私は更に顔が熱くなって俯く。
「今のは忘れてあげる。だから、もう止めてよ…誰かに見られたら困るでしょ」
「はっきり言えよ。“研磨”に見られたら困るって」
相変わらず意地の悪い笑みを浮かべるクロを見た。
すると、クロがグイッと顔を近付けてくる。