第6章 猫⑥
思わず私は研磨から顔を外して横に並んで座る。
「研磨は、何を知りたいって思う?」
いつもより早くなる心臓の音、もしかしたら私の事知りたいかもって自惚れて、聞かれたいけど聞かれたく無い事だったらって不安にもなる。
「…あやね」
「へっ!?な、何!?」
「クロの機嫌悪くなってる」
「えっ?」
研磨に言われ呼び出されていたクロを見ると、苛立ちからか頭を思いっきり掻いている。
クロがこっちに近付いて来る姿は、座っているから余計大きく感じた。
「俺、この後残らねーとならなくなった。研磨、もう遅いから俺の代わりにあやね送ってくれ」
「…分かった」
「だから大丈夫だって!研磨も部活で疲れてるんだから、早く家に帰った方がいいよ!!」
すると、真顔になる二人に思わず萎縮した。
「あやね、送るから」
そう言って研磨が私の服の裾を少しだけ掴んで引っ張る。
そんな些細な事でも、研磨が積極的に私と関わる事が嬉しくて私は我慢出来ずに笑っていた。
「ありがとう…研磨」
お礼を言えば研磨は軽く頷く。
支度をすると言って更衣室へと歩いてくので、私もその後を付いて行くとクロまでもがにやけた顔で付いて来る。
「クロ呼ばれてんでしょ?」
「ああ、タイミング悪い事にな」
「…今度ちゃんと時間作るから。その時話そう?」
とりあえず体育館の近くで研磨を待とうと、体育館を出れば辺りに人気はもう無かった。
何も言ってこないクロを気にしつつその場で足を止める。