第6章 猫⑥
部活が終わったのはそれからきっかり30分後だった。
部活が終わり片付けをする部員をよそに飛んで来るクロ。
「ちゃんと逃げずにいてえらいぞ〜!」
そう戯けるように言って私の頭をグリグリと撫でるクロは、機嫌が良くなっていた。
「逃げるなって言ったのはクロでしょ?それと、頭痛い…止めて」
「はははっ!言っとくが、俺の心はもっと痛かったんだぜ〜!」
冗談、じゃないクロの気持ちに申し訳なくて、私はせめてもの償いにとグリグリと撫でるクロにこれ以上撫でるの止めてとは言わず黙っていると、監督がクロを呼ぶ声が聞こえる。
「呼び出しか、ちょっと待ってろ?家まで送るから」
「送らなくていいよ!?そんなに遠く無いし…って話し聞く気無いな」
私は小さな溜め息を吐くと、他の部員が私へ頭を下げて体育館を出て行く。
気を使わせてるなーと悪い気持ちになり、部員が次々と出て行く姿の中に研磨を探すが研磨の姿は見え無かった。
私は体育館を見渡すと端っこの方で、怠そうに座る研磨を見つけて私は移動する。
「研磨お疲れ様」
「……お疲れ」
この前少し距離が縮まったと思ってたけど、あまり変わって無いのかもしれない。
私を見ようとしない研磨に、悲しい気持ちになってる。
「幼馴染なのに、私、初めて二人がバレーしてる姿見たよ。きっと、まだまだ知らない事多いんだろうね」
すると、研磨が私を見上げた。
「おれも、知らない事多い…」
研磨の真っ直ぐ見つめる瞳に、今まで感じた事の無い不安を感じる。
本当は私とクロの事知ってるんじゃないかって。