第6章 猫⑥
「何で連絡よこさねーんだよっ!?」
「痛っ…クロ、練習中でしょ…それに今話す事じゃないよ」
「っく!!あやね、練習終わるまで待ってろ!!逃げんなよ!?」
「えっ!?ちょっと!?」
「見学入りまーーっす!!」
そう言ってクロに引かれながら体育館へと入る。
天井のライトが眩しく、久しぶりに入る体育館は練習で掛け合う声とボールを叩く音が響いていた。
体育館の扉が閉まる中、女子三人の冷たい視線が怖かったけど…。
腕を引っ張るクロの腕や背中を見て、ふと思う。
私はこんなに逞しい人に抱かれてたんだって懐かしむような気持ちでクロを見ていた。
「こっちで待ってろ。後30分で終わる予定だから…」
「あ、分かった…練習頑張って」
今、私上手く笑って言えたかな。
笑顔、引きつって無いといいんだけ。
苛立ったクロの表情は、いつの間に困ったような笑顔に変わっていて、私の頭に大きな手のひらが優しく乗った。
「ああ、頑張る」
さっきまでの苛立った雰囲気はもうそこには無く、クロはやっぱ大人だ。
私から離れて練習に戻るクロを見ていたら、クロの少し先に研磨がいた。
私を一度見たが、それ以外部活中に研磨が私を見る事は無かったけど。
研磨が私を見なくても私は研磨を見る。
もちろんクロも見るけど、周りの子達…薄っすらと覚えてる。
みんなバレーが上手い。
こうやってクロや研磨がバレーをする姿を見るのって初めてで、私が頭で思ってた以上に二人は上手くてかっこよかった。