第3章 猫③
あんまお礼とか言った事無いから変な感じだけど、今はクロに言った方がいいと思った。
やっぱクロは驚いた顔したけど、すぐにいつもの笑顔でおれの首に腕を回す。
「重い…」
「ははっ!別にいいだろ!?珍しいもん見れたからな!」
「……もう絶対言わない」
「何ーっ!?研磨はもっと俺に感謝していいんだぜー?」
まだ続くのかって思ったから、おれはポケットに入れてたスマホを取り出しやりかけのゲームを再開。
クロの家近くまであーだこーだとか言ってたのに、突然静かになった。
あまりに突然だったからクロを見てみると、真顔でスマホを見ている。
「……研磨悪りぃ、ちょっと先に俺の部屋行っててくんね?」
「どうかした?」
「ちょっとヤボ用!すぐ済むから逃げずに俺の部屋行けよ!!」
指を指され、内心このまま家に帰ろうと思ってたのを見破られていた。
おれがクロの家に入るまでジッと見ていたが、玄関のドアを開けたところで誰かに電話をかけている姿が見えた。
何かトラブルでもあったのか、ここで考えてても仕方ないから部屋に行きクロが来るまでカバンに入れてたゲーム機を取り出しスリープを解除。
戦闘シーンから始まるゲームをプレイしているとすぐに足音が聞こえた。
もう終わったんだ。そう思っても画面から視線を外す事なくボタンを連打。
ドアが開いて入って来ると共に香る甘い匂い、その不自然さに視線だけを入口へ向ければ、心臓が痛みを伴うほど大きく跳ねた。
「勝手だよな…」
少し苛立った声は小さく、その声の主はおれに気付いてはなかった。