第19章 猫と私④
こんなにおれ、余裕無くなるなんて…。
体育館にクロ達が入って来ると、おれの頭にポンッて手が乗っかる。
「あんま気持ち押し殺すなよ」
「クロ…言っていいのかな?」
行くなって。
「いいに決まってんだろ。お前は彼氏だからな…」
頭の上からクロにそう言われただけで、すごく気持ちが楽になった。
「あやねにお前の気持ちちゃんとぶつけろよ」
「うん…」
「じゃっ、そんな顔しねえーで練習すんぞ!!」
おれを置いて先に行くクロの背中を見て、おれも気持ちを切り替える。
あやねにちゃんと伝えるって決めたらなんだかスッキリとした。
部活が終わったおれは直ぐに更衣室へと駆け込みスマホを手にしてあやねに電話をしたが、いっこうに出る気配が無いから電話を切って先に着替える。
着替え終って荷物を持ち更衣室を飛び出るとクロ達とすれ違う。
『お疲れ』とだけ言って、リエーフが何か言ってるのも構う事なく学校を出るとようやくおれのスマホが震えた。
「あやね!」
『あ、うん。電話くれたよね?どうしたの?』
「今どこ!?」
『今?家で準備中だよ?』
「すぐ行くから待ってて!」
『いいけど…研磨、どうしたの?』
「話がある」
おれがそう言うとスマホからは少し不安そうな声で『分かった』と言うあやね。
おれはとにかく早くあやねに会って言いたかった、スマホを切ってあやねの家へと駆けだす。
こんなに走るの、部活以外では久しぶりだ。