第2章 フライングゲット〔白石蔵ノ介〕*
あのあと、なかなか起きない私をよそに、蔵はベッドやシーツの片付けに追われたらしい。
気がついたら蔵のジャージを着せられていた。
ひとしきり謝ったあと、にやにやする蔵を一発殴って。
帰るために着替えようと鏡を見たら、お腹から上に無数の紅い華が咲いていた。
「やだあ、こんなんじゃ明日海なんか行けないじゃん!」
半泣きになって蔵を睨むと、本人は視線を泳がせながら、他の男にはどうしても見せたないねんもん、と言って。
明日はこれ羽織っとって、と見慣れたパーカーを私に着せた。
恨みがましい目をしてみるけれど、他にいいアイデアが浮かぶわけもなく。
結局、私の水着は文字通り、陽の目を見ることはなかった。
海に着いて、私が何の気なしに「すごい、潮の香りだね」と言ったら、蔵が真っ赤な顔をして「それ、あかんやつや…」と前屈みの姿勢でしばらく動かなくなってしまった話は、また別の機会に。
fin
◎あとがき
読んでいただきまして、ありがとうございました!
かっこいいけど完璧でない白石くんを書きたいと思いつつ、あんまり崩しすぎるのも彼に失礼な気がするしと悩みつつ…いい塩梅ってつくづく難しいです。
最後は裏というより単なる下ネタに走らせてしまった気もするし…
白石くんごめんなさい、あなたはちゃんとかっこいいです。
またしても、夏を感じる前に話を終わらせてしまった感がありますが、次こそは…!