第6章 誰が為に花は咲く〔跡部景吾〕
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花火大会のラストスパート、スターマイン。
色とりどりの花火が次々と打ち上がって、真昼のような明るさになる。
最後に大輪がどん、と咲いて、自然発生的に拍手が沸き起こった。
「終わっちゃったね。…帰る?」
いつまでたっても空を見上げたままの跡部にそう声をかけたとき、会場アナウンスが遠くから聞こえてきた。
『林渚さまー、林渚さま』
「えっ! やだ、私、呼ばれてる? なんで…」
『今大会に多大なご協力をいただいております跡部グループより、花火の贈り物です。どうぞご覧ください』
信じられないことばかりを知らせてくるアナウンスが終わらないうちに、再び打ち上げが始まる。
金色の火の粉がきらきらと長い尾を引く「冠菊」。
華やかでいてどこか儚い美しさのそれが、私は一番好きだ。
そんなことは一言だって言ったことはないはずなのに、見事に冠菊ばかりがいくつも上がって、目が離せなくなる。
一際大きな四尺玉なんて、光の粒がいつまでも枝垂れるから、手を伸ばせば届きそうなくらい。
結局、当初ラストスパートだと思っていた連続花火よりも、よっぽど長くて華やかな最後だった。
そして私の家の前に来るまで、私たちは手を繋いだままだった。
跡部グループが花火大会のメインスポンサーだったのを利用して、昨日一緒に行く約束をしてから急遽準備をさせたのだと、帰る道すがら跡部が種明かしをしてくれた。
金色の冠菊ばかりだったのは、跡部が一番好きだから、らしい。
なんでも、菊の花言葉は「高貴」なのだとか。
「私も一番好き」と言うと「珍しく気が合うな」と笑われた。
「跡部のことも同じくらい好き」と続けたら、二度目のキスが落ちてきた。
fin
◎謝罪
冒頭にも書きましたが、短編集にアップした跡部夢の再録です。
もともとこちらにアップする予定だったのに、間違えて短編集に上げてしまい…
短編集からナツコイへ完全に移動させることも考えましたが、もろもろの事情から、再録という形を取りました。
新作かと思ってクリックしていただいた方には、本当に申し訳ありません。
今後こんなことがないように気をつけます!