第2章 フライングゲット〔白石蔵ノ介〕*
蔵の隣に並ぶために買ったのに、という抗議の言葉は、蔵の口づけによって溶けてなくなってしまった。
代わりに漏れたのは、恥ずかしくなるくらいに甘い声。
舌が絡め取られて、腰が砕けて。
回されていた蔵の腕にすがりつく。
「あかんわ、ほんまにあかん。誰にも見せたない」
やっと唇が解放されたと思ったら、悩ましげに笑った蔵が首を振る。
コツンと額を合わせてきて、堪忍な、と吐息交じりに言って。
また、首筋に噛み付いてきた。
拒む間もなく、ちり、ちりと痛みが襲ってくる。
途中で数えるのが難しくなってしまうくらいに、何度も。
「俺のもんやんな…いつものも、こんなかわええ水着姿も、全部俺だけのんやんな…」
息継ぎをするように、うわごとのように、蔵は何度もそう呟いて。
「そうやんな? 頼むから、うんって言うて…」
こんなに余裕のなさそうな蔵を見るのは初めてで、愛されているのが苦しいほどに伝わってきて。
愛おしい気持ちを代弁する言葉が見つからなくて、私は下へ下へと移動する蔵の頭を掻き抱いた。
もともと覆う部分が少なかったビキニは、あっという間に剥ぎ取られて。
情けなく床に落ちたそれは、洋服なんかに比べて本当に小さくて、こんなのを着て外を歩こうと思っていた自分が改めて恥ずかしくなる。
名前を呼ぶと、蔵は私を軽々と抱き上げて、ベッドへと運んだ。
「もう我慢でけへん、ええか?」