第2章 フライングゲット〔白石蔵ノ介〕*
「似合いすぎやわ、ほんま」
「…なんで何も言ってくれなかったの」
「似合いすぎててびっくりして、褒めんのも忘れてしもてたんや…堪忍な」
「本当?」
「ほんま」
「………本当?」
「ほんまにほんま。めっちゃかわええ」
「…わかった。許すから、どいて。もう着替える」
蔵の拘束から逃れようとしたけれど、腕はそれまで以上にきつく回されて。
押しても引いても、離してと言ってみてもびくともしなくて、ねえ、と蔵を見上げたら。
真っ赤になった蔵の顔。
何それ、ずるい。
そんな顔見せられたら、こっちが恥ずかしくなっちゃうじゃない。
「どう、したの」
「なあ…なんでこんなかわええの」
「え?」
「かわいすぎて反則やっちゅーねん」
「く、蔵?」
「…あかんわ」
蔵の唇が、むき出しの首筋に触れる。
それがいつもより熱いもののように感じたのは、私の身体がエアコンで冷やされたからなのかもしれないし、蔵自身が熱を持っていたからなのかもしれない。
くすぐったくて身をよじるけれど、力強い蔵の腕からは到底逃れられなくて。
触れられたところにちりりと痛みを感じて、咎めるように蔵の名前をもう一度呼んだら。
「俺のんやって印つけとかんと」
「や、だ」
「かわいすぎて他の男わらわら寄ってきてまうわ」
キスマークなんて恥ずかしいからやめて、と抵抗したのだけれど、蔵はさっきの険しい顔に戻って。
「ちゅーか、こんなんで外出たらあかん」