第1章 太陽とギンギツネ〔仁王雅治〕
「のう。汗、かきたいんか?」
「え、うん…」
「決まりじゃな」
雅治はひらりと布団を剥いで、ベッドにがばっと起き上がって。
さっきまでぐうたら寝ていた人間とは思えない身のこなしで私を抱き上げて、ベッドに引きずり込んだ。
「ま、雅治…?」
「汗かきたいんじゃろ。暑くなること、するぜよ」
私の顔に両手で触れた雅治は、冷えてしもうたか、すまんかったのう、と言って。
あっためちゃるよ、なんて耳元で囁くから、抵抗しようとしたはずの力がどこかに飛んでいってしまって。
体温が一気に上がったような気がした。
雅治の口づけは、とても甘くて。
別に夏でなくても、私の中の雅治の記憶はどれも鮮やかだったことを、酸欠でぼやける頭で思い出した。
肉食のギンギツネにまんまと狩られたあと、もう一度カーテンをめくると、日はもうほとんど落ちていた。
それを見た雅治は私の髪を撫でて、出かけるか、と微笑んだ。
テーブルの上には、いつの間にか手持ち花火が置いてあったから。
私は、一生かかってもこのギンギツネを狩ることはできないんだろうなと思った。
fin
◎あとがき
読んでいただき、ありがとうございました。
ギンギツネ、もとい仁王くん、いかがでしたでしょうか。
仁王くんを書こうとすると、どうもエロに持って行きたくなります。
彼の不思議な色気なのか、はたまた私の仁王くん愛が偏っているのか…。
夏の恋を集めた短編集、なんですが、あんまり夏っぽくない話でスタートしてしまいました。
もっと夏っぽい話、これから書いていきますので!
ぜひ、今後もご愛読くださいませ。