第4章 ホーンテッド・スクール〔日吉若〕
日吉とは同じ委員会だ。
前に一度当番を失念してしまったとき、謝っているのにありったけの嫌味を言われて。
そのあとも委員会の集まりがあるたびに「すぐ当番を忘れるヤツがいるからな」とか「お前の頭は帽子の台なんじゃないのか」とか、ちくちくと小言を言われ続けた。
「日吉の頭はキノコなんじゃないの」と言い返そうと思ったこともあったけれど、何倍にもなって返ってきそうだし、もとはといえば自分の撒いた種だから黙っていた。
それ以来、できればあまりお近づきになりたくはない存在。
…よりによって、その日吉とは。
運とやらは、どこまでも私に味方しないつもりらしい。
近くにいた子と話して気を紛らわせていたら、一時間近くあったはずの待ち時間は、驚くほどあっという間に過ぎた。
頼んでもいないのに「おい、次らしいぞ」とご丁寧に日吉が私を迎えに来て、いつの間にか順番を飛ばされていたらいいのにという淡い期待は、ものの見事に打ち砕かれる。
日吉は前のペアの男の子から懐中電灯を受け取って、すたすたと歩き始めた。
私は霊感があるわけでも、視える体質というわけでもないのだけれど。
いや、だからこそ、そういう類は苦手だ。
無意識に身体がぶるりと震えた。
夜の校舎は、近づくと真っ黒で大きな影に見えてきて、とてつもない威圧感。
思わず足が止まりそうになるけれど、たとえ苦手な日吉であっても、身近にいる唯一の人から離れすぎてしまうのは怖かったから、つかず離れずといった微妙な距離を取る。
校舎に一歩足を踏み入れると、耳が痛くなるほど静かだった。
そして、想像していたよりもずっと暗くて。
非常口を示す緑色と、火災報知器の赤色のライトだけがぼんやりと存在を主張している。
日吉の持つ懐中電灯だけが頼りだ。