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ナツコイ【庭球】

第4章 ホーンテッド・スクール〔日吉若〕


ランタンを挟んだ向こう側からは「日吉が跡部さんに頼んでくれたんだよ」「さすがだな」という男の子たちの話し声が、かすかに聞こえてきた。
どうやら日吉が同じテニス部レギュラーという立場を利用して、生徒会の跡部会長に学校の使用許可を取ったということらしかった。


…日吉め、なんてことを。
末代まで恨んでやるんだから。

無愛想で憎まれ口だけは一丁前なあいつの足をどさくさに紛れて踏んでやろうと、そのサラサラの茶髪を探すけれど、あいにく視線の届く範囲には見つけられなかった。


確かに夜な夜な学校に集まるなんて、本来なら事前申請をしたって却下されそうな企画を思いつきの勢いで実現させるには、跡部会長の強力な後押しがなければ不可能だろう。
校舎のセキュリティシステムを一時的に解除しておくとか、きっといろいろ大変なのだろうし。

生徒会の役員でもないのに、日吉はずいぶん発言権を持っているんだなと、少し意外な気がした。


でも、いかにもクラスでのイベントを面倒くさがりそうなあいつのことだ。
あらかた委員長か誰かに頼み込まれて、仕方なく跡部会長にお伺いを立てたに違いない。

いや、もし仮にそうだとしても、この忌々しいイベントを実現させてしまった日吉の罪はちっとも軽くはならないのだけれど。




八時を五分くらい過ぎたところで「これで全員揃ったね」と委員長が声を張り上げた。

男女一人ずつがペアになって二年F組の教室まで行き、次に理科室に寄って、どちらの部屋でも照明のスイッチを三回つけて消すのがミッションらしい。
グラウンドにいるクラス全員が証人になってしまうから、イカサマはできそうにないなと思っていたら、委員長が「ズルはできないよー」なんて図ったようなタイミングで言うからぎくりとした。
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