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ナツコイ【庭球】

第4章 ホーンテッド・スクール〔日吉若〕


誰が言い出しっぺなのか「夜の学校で肝試しをする」なんて史上最悪の連絡網がクラスのLINEで回ってきたのは、昨日の昼のことだった。


私は幽霊とか怪談とかオカルトとか、そういう類が大の苦手だから、もちろん行かないつもりでいたのだけれど。
悪目立ちしないように、他の欠席者を待って「私も行けない」としれっと言いたかったのに、まさかの全員参加。
どちらかといえばリッチな家庭の子が多い学校だから、クラスの四十人のうち誰か一人くらい旅行中で欠席する子がいるだろうという私の見立ては、完全に外れてしまったわけだ。

どうにも欠席とは言い出しづらくなってしまって、私はひどく後悔した。
後の祭りとはこのことだ。




軽めの夕飯を済ませて、家を出た。
集合時間は、完全に暗くなる午後八時。

深い深いため息を何度も何度も吐きながら、学校までの道をたどる。
体調が悪いとドタキャンしてもよかったのかもしれないけれど、それはそれで気が進まなくて。
自分の生真面目さをこんなにも憎々しく思ったことは、かつてなかった。



道草はしなかったのに、無意識のうちに足取りがゆっくりになっていたのかもしれない。
集合場所になっていた運動場に着いたときには、もうほとんどのクラスメイトが集まっていた。
誰かが持ってきたのだろう、アウトドア用のランタンと蚊取り線香。
それらを中心にした人の輪の中から委員長を見つけて、到着したことを告げる。

夏休みは十日と少ししか過ぎていないのに、クラスの面々と顔を合わせるのはずいぶん久しぶりなような気がした。
「久しぶりだね」「宿題やった?」なんて定型文のやりとりを、近くにいた何人かと繰り返す。
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