第14章 ★約束(4)
「やっ…」
天海が俺を止めようと手に触れて来る。
「だめっ…まだっ、私っ」
仰向けに寝そべった状態で「だめ」と繰り返し頭を振る彼女の、潤んで憂いた眼差しに――俺の心底で息を殺して潜んだ本能が騒ぎ始めた。
「だめっ…若利くん…」
「十分に濡れている」
客観的な事実を口にして、俺は彼女の手を退かしもせず、中指で布越しに彼女の窪みを擦った。
「…やぁっ…」
「ありさ」
「あんっ…や、めっ」
「それは、俺とは嫌だという意味なのか?」
考えたくはない可能性を口にして天海の目を覗き込んだ。
瞬時に、天海の顔が大きく歪んだ。
「違っ…あっ…」
指の往復に合わせて呻きを含んだ吐息を漏らす天海の手を俺は空いた右手でそっと退かす。力なく落ちた手は、ホテルのロゴが入った布団へと落ち、ぎゅっと掴んだ。
「…若利く、ぁっ、だめっ、おね、が…ぃっ」
「その願いだけは聞けない」
説くような口調で、しかし、強く断じて、俺は下着の上からの愛撫をやめると隙間から指を挿し入れた。
「ぁっ…!」
彼女の蜜が溢れた花唇は、彼女自身を裏切って、何の抵抗もなく俺の指を受け入れる。
「あ、あ、あっ」
腰を浮かし、内股気味にした太ももを震わせ、天海が喘ぐ。
鼻にかかった甘美な声音。
俺の喉が鳴る。
「ぁぁん」
根本まで沈めた指先は、彼女の温もりとぬめりとで包まれ締め上げられた。
熱い。大きく息を吐く。
彼女の熱に煽られて、俺自身も熱い。
着たままのジャージのファスナーを下げ、入口で「脱げば」と促されたことを思い出したりもする。
「あっ、わか、あっあっ」
左の指は休ませず、天海の“中”でうねるように動かし続けた。
柔らかい彼女の内側を指の腹で擦るたびに、部屋に彼女の高い声が響き渡る。
もっと聴きたい。
もっと、もっと。
指を引き抜き、邪魔な下着を剥ぎ取って膝の辺りまでずり下ろすと、俺は指を2本にして彼女の中へ沈める。
「あぁっ!」
天海が顎を上げ、苦悶の表情を浮かべながら、艶めかしく震える。
晒された首筋には、右と左、両側に赤い刻印。
露わな肩を抱いて、俺は耳元へ囁く。
綺麗だ…と。
今まで何度となく思い、本人にもその言葉を投げてきた。
だが、感じている今の姿が1番綺麗だと俺は思った。