第14章 ★約束(4)
口内で舌を絡ませる。
混ざり合う唾液の音に、次第に俺自身が熱くなっていく。
「…んっ…」
時折、天海が身体を震わせて、俺のジャージを握って何かに耐える。
同時に、その手の動きとは逆に、無意識なのか、腰を引いて離れようともした。
――逃がしはしない。
腰を抱く手、腰骨に触れている指先に力を込めて身体を密着させた。
途中で背に回した手もうなじの辺りへ移して、深く深く、交わる。
「ん、んっ…」
呪縛のような抱擁と執拗なほどに貪る口付け。
荒々しく、長く、腕の中の彼女を翻弄した。
「…か、とし、く…んっ…」
透明な糸を引いて離れた後、荒く弾んだ息の向こうから俺を呼ぶ天海。
同じように整わない息遣いのまま呼応する俺。
「天海…。――ありさ」
体育館で見た時よりも艶かしく、美しく、触れれば溶けて崩れ落ちる果実を思わせる甘く蕩けた彼女の眼差し。
魅せられる。
優しく抱きたい。
壊してしまいたい。
二律背反な衝動を抑え込んで俺は、傍らのベッドへ彼女を横たえた。
「若利、くん…」
思いの外深く身体をシーツの海に沈めた天海が切なそうな声を出す。
「お昼の時みたいに、好きって言って。何度も」
否やを唱える願いではない。
俺は天海の身体の横に手をついて、真上から彼女を見下ろした姿勢で望みを叶える。
「好きだ。ありさ、お前が好きだ」
囁く言葉は火を点ける。
身体中を駆け巡る血という血、それを熱く滾らせる。
「初めて会った日のお前も、俺のことを好きだと言ったお前も、カラオケでのお前も今日のお前も…すべてに惹かれている。好きだ」
語りかける言葉の最後は唇に直接刻んだ。
そして、次の刹那には彼女の耳朶を軽く食み、首筋を汗のように伝い降りて行った。
「ぁっ…ん…」
自分のつけた赤い痕跡を確かめるように舐めた後で、不意の思いに駆られ、反対側の首筋にも印を残した。
「んっ…若利、くっ、んんっ」
「お前が好きだ、ありさ」
俺が舌を這わせるたびに揺れる身体が愛おしくて、その肌を、彼女の身体のすべてを味わいたい欲に支配される。
指先が胸の起伏を辿りおりて行き、下腹部へ行き着き――不用意に開いた膝の合間へと潜っていった。
“そこ”は、まだ薄い布によって覆い隠されていたが既に熟れていた。