第33章 ★ボーナストラック
指先で掬うように彼女の口端を拭って、俺は、暴力的なまでに膨れ上がった自分の欲望を強く深く打ち込んだ。
「ぁ、ゃ、だ、めっ」
「ありさ…ッ!」
穿った楔はそのままに、最奥を圧し撫でるように腰を大きく回す。
一段高い声で鳴いた天海が苦しげに俺を呼び、衝き動かされた俺は彼女を抱きしめた。
抱きしめて、揺さぶって、融けあい交じりあい、支配し、支配され――1つに。
(お前と、共にいたい)
どこまでも彼女と行きたいと願う。
どこまでも。
それはどこまでだ? 牛島若利。
自問に対する答えは明確だ。
(頂きまでだ)
バレーで目指す頂き。
そこまで、バレーと共に選び取った彼女と共にたどり着きたい。
登り始めた道は長く険しく、頂きはまだ遥か先。
同じような志を持った者の中には、その困難な道のりに弱音を吐いて途中で足を止める者もきっといただろう。
だが。
(俺は、立ち止まらない。天海、お前がいる限り)
それは確信だった。
あの、春を待つ二月の終わり、俺の標となれと命じた俺と、受け入れた彼女の揺るぎない誓約だ。
「ぁ、ぁ、若利、く、ぁ、ぁっ!」
俺の背で爪を立てる彼女の、胸を締め付ける、同時に俺を欲情させる、切ない呼び声に俺は弾んだ息で応えた。
「ありさ…愛している」
誰よりも深く。
誰よりも強く。
(いつか、お前を、俺が頂きに連れて行く。そのときは…)
抑えきれない想いを胸に、俺は自らのすべてを彼女の中に放つ。抱きしめた華奢な身体は同時に痙攣のように震えた。
「んんんんっ――!」
その身体が持つ熱を接した肌伝いに感じ取りながら、俺は瞼を閉じる。
「若利、くん…」
やがて、忙しく疾る鼓動が落ち着き始めた頃。
気怠げな掠れた声が耳朶に滑り込んでくる。
「なんだ?」
「私…すごく…幸せ…」
「そうか」
「あと…すごく…」
俺は音を立てずに彼女から身を離した。
ゆったりとした口調でなんとなく察したが、彼女の整えられつつある呼吸はいまにも寝息に変わろうとしている。
この様子では、きっとまた、何時間も眠りにつくことだろう。
彼女の額にかかった髪を退けて、俺はキスを落とす。
そして、しばし眠ろうと決める。
全身に広がる心地良さと、満ち足りた彼女の姿。
それらが今夜は珍しく、俺にも夢を見せてくれそうな気がした。