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【HQ/R18】二月の恋のうた

第14章 ★約束(4)


俺の呟きに天童が「若利くんに伝わった感、ある!」と声を弾ませる。
蔑ろにされて腹を立てていたはずの瀬見が、そんな天童に感嘆していた。

「…すげぇな、天童」
「若利くんの恋愛コンサルタント担当になりつつある俺」
「何がすげぇって、そこでバレーに例えた発想がすげーよ」
「そっち! …まぁでも、褒められてることには変わりないよね」

口の端に笑みを刻んで、天童が気分良さげに鼻歌を歌いだす。
瀬見が呆れながらもやはり笑って、俺を仰ぎ見た。

「…わざわざお前に会いに、はるばる仙台まで来てくれたんだ。天海さんの気持ちもちゃんと汲んでやんねーとな。壁打ちしてるわけじゃねーんだから」

俺は携帯に目を落とす。

――会いたい。

自分の中に芽生えていたその感情が、少しだけ形を変える。

――会って、話をしたい。

声を、言葉を、彼女の想いを知りたい。
切なそうな顔をしていた、天童がそう評した天海の胸の内を知りたい。

俺が渡したボールを、俺は、今度は受け取る側へ回る。回るべきだ。

起動していたアプリの操作タブをメッセージモードから通話モードへと戻した。
だが、受話器のアイコンを押下するよりも先に主将から号令がかかった。

俺は、天童と瀬見が見ている中で、唇を結んで携帯をしまいこんだ。

「移動だ」

自分に言い聞かせるようにその言葉を発して、顔を上げた。

…どうにもならないことはある。

(もう2度と会えないわけではない)

それに、話すだけならば、携帯の通話で可能だ。
毎日の20分の会話。
お互いを知るためのその時間に話せばいい。

心中を整理して、俺は2年の誰よりも早くバスへと向かった。

バスに乗り込み、着座してから出発するまでの間に、携帯を取り出してメッセージを1本送っておいた。

“すまない。すぐに帰校することになった”

返信を確かめず、携帯を元の場所に戻す。

バスでの帰校は大して時間はかからない。
隣に座った添川と取り立てて何かを話すでもなく、白鳥沢に戻る。
帰校後は、いつものように集合してコーチからの指示を聞いた。

「今日はこのまま解散。各自、身体をきちんと休めるように。明日は10時に体育館集合でミーティングだからな――以上、解散」

部員全員の一斉の返事。
俺も声を出して踵を返し…かけたところで、大平に肩を叩かれた。
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