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【HQ/R18】二月の恋のうた

第13章 約束(3)


決勝戦は代表戦で唯一の5セットマッチ。
お互い手の内を知り尽くしている相手同士、第1セットの序盤から激しい点の取り合いになった。

だが、殴り合いとなれば白鳥沢に分がある。

俺たちは、及川のセットアップに振り回されてスパイクを完全にシャットアウトできないが、完全遮断は無理にしても、コースをある程度読んでボールを上へあげることができた。

対して青城はというと、俺のスパイクに触れることができても触れられただけ…及川のトスに繋げられなかった。

純然たる力の差。
第1セットの結末は、25対19で白鳥沢の勝利。

続く第2セット、鷲匠監督が3年の先輩を外して天童を入れた。
向こうも同じように3年のMBを入れ替え、俺たちが試合前に気にしていた男――後で「松川」という名前であることを知る――を投入してきた。

第2セットはこの2人のブロッカー対決だった。

天童が3年のエースと岩泉、2人に対してそれは見事なブロックを立て続けに決めると、相手のMBは俺たちにスパイクコースを限定させるようなブロックを行い、レシーブ率を高めて反撃に興じてきた。

「あー、やっぱり俺の直感正しかった! 厄介なのだった!」

タイムアウトにタオルを汗で拭きとりながら天童が吠える。
スコアボードの点数は並びそうで並ばず、それでいて突き放すことができない状態が続いている。

監督から白布へ、長期戦にならないように気をつけろという指示だけが出た。
何か言いたそうな瀬見の視線を受けながらも、白布はタイムアウト時に俺に
「今までどおり牛島さんに集めますが、テンポは速めにしていきます」
と予告した。

その第2セットは27対25で俺たち白鳥沢が、続く第3セットでは逆に25対27で青城が奪取。
監督から雷が落ち、俺たちはこの第4セットで試合を決めるように命じられ、結果としてそのとおりの事を為した。

セットカウント3対1。
白鳥沢は今年も春高の宮城代表となった。

その瞬間を、感慨もなく平然と受け入れた俺は、試合後のクールダウンの段階になって初めて天海のことを思い出した。

そういえば、なぜ、天海は、岩泉たちに言ったのだろうか…「頑張ってください」と。
インターハイの時に、天海は俺には「勝ってください」と言ったのだ。

俺はそこで初めて“それ”を疑問に思った。
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