第12章 約束(2)
肩は“なで肩”で、七分丈から伸びる腕同様に肩も細い。
胸は…以前、山形が言っていたが、確かに他の女たちに比べると大きいように思えた。
どうしてもそこに目が行ってしまう…という程のものではない。が、衣服に陰影を作るには十分な起伏があった。
視線を下ろしていくと、腰のくびれも目についた。
今日は長めのスカートを履いているが、胸から腰にかけてのラインは、ややゆったりとした衣服の上でも流麗なものだった。
…体脂肪率はどのくらいなのだろうか。
そんなことを考える一方で、頭の片隅で、俺は別のことも考えている。
あの身体は、俺の腕の中にすっぽり収まってしまうだろう。
細い腰は片腕で抱けるんじゃないか。
――自分でも珍しいと思うのだが、思考が散って定まらない。
ひどく猥雑としている。
「なに突っ立ってるの、若利くん」
そこそこに大きな声で話しかけられた。
声の主は天童だ。
俺が天童の方へ振り向くよりも早く、視線の先、話の中心にいる天海が俺に気づいた。
「牛島くん」
その声を追うようにして、天海の周りにいた青城の一団が揃って俺を見る。
俺は動じることなく、それを契機とばかりに彼女へと歩み寄る。
向こうでも、二言三言、周囲に何か言ってから、少し小走り気味に俺の方へやってきた。
「声、かけてくれればいいのに」
俺は何も言わずに天海をじっと見つめた。
「…な、なに?」
「いや」
やはり身長は160cm程だろう。
高低差の恩恵で胸元の谷間も見えた…こちらは目視で測ることはできないが。
「牛島くん…?」
「いいのか、向こうは」
視線を天海の顔まで戻して、俺は女たちのことに言及する。
天海は苦笑した。
「大丈夫。どうしようか困ってたところ…あんな風に囲まれるとは思わなくて」
「大まかな話は大平から聞いた。あの件、青城の生徒を止めて自分から進んで行ったらしいな」
「うん、まぁ…」
頷いて、天海は真顔になると誰に言うともなしに言う。
「もう少しスマートに収めるはずだったんだけど」
「慣れてるのか、ああいうことは」
俺は直感的に聞く。
天海の意識が俺へと戻る。
「会長やってた時に色々とあってね…」
俺は言葉を最後まで聞かずに、手の平で包むように頬に触れ、親指で頬骨の湿布に触れた。