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【HQ/R18】二月の恋のうた

第12章 約束(2)


青城は最終的に第2セットを26対28で取り、セットカウント2対0で決勝戦での相手に決まった。
ダウンの最中にそれを知った俺たちは、観客席へ荷物を取りに戻ると席につかずにそのまま帰り支度をする。

「荷物をまとめた奴から移動! 今朝集まった場所に、25分までに再集合!」

主将の言葉に全員一斉に返事をする。

俺は、さほど時間を掛けずに荷物を持つと、階段を上る。通路まで出ると、1年の梅田と話しこんでいた大平と目が合った。

「若利」

話を切り上げて、大平が俺に声をかける。
傍らまで行き、そこからは共にゆっくりと歩きながら俺は大平と話し始めた。

「天童に少しだけ聞いたが、天海さん、青城の騒動に関わってたとか」
「あぁ」
「…経緯は聞いたのか?」
「いや。さっき会いはしたが、話を聞くほどの時間はなかった」
「俺の呼び出しが邪魔したらしいな、すまんね」

大平の謝罪に、俺は首を横に振って応える。

「団体行動を乱しかけた。連絡をもらって却って助かった」

「実はな、若利」
と、大平が笑みを浮かべて話題を転じる。
「お前がすっ飛んでった後、天海さん、こっちで話題になっていたぞ」
「話題…?」

話が読めずにおうむ返しで聞くと、大平が大きく頷いた。

「聞こえてきた話を総合するとな、青城の女の子が酔っ払いに絡まれてたらしいんだ」

それは知っていた。
被害に遭った生徒を見ているし、及川たちの話も漏れ聞いている。

「それに気づいた青城のバレー部の奴――ベンチ組じゃない奴だな――、そいつが助けに行こうとしたのを天海さんが引き止めたそうだ」

「天海が…?」

「ジャージで判断したのかな、出て行って揉め事になると試合に影響が出るだろう、と。だから、関係ない自分が間に立って時間を稼ぐから、大会関係者を呼んできて欲しい。そんな風に言ってったんだとか」

俺は、頭の中で情景をイメージする。
語られた人物が天海であるかどうかはわからないが…ありえそうな気がした。

「青城の女性に大人気だぞ、天海さん。及川よりカッコイイ、なんて声も聞こえて、俺たち皆で笑っててな」
「…そうか」

何と答えたものか考えながら、俺は2階の中央ロビーへ続く扉を押し開く。

偶然にも、その中央ロビーの片隅に天海がいた…青城の制服に囲まれて。
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