第11章 約束(1)
青城の女生徒と天海が連れ立って歩き、その後ろを及川、俺、天童と続く。
この行列の奇妙さは周りも認めるところだったに違いない。何せ「白鳥沢」と「青城」が行動を共にしているのだ。すれ違う連中が必ずと言っていいほどこちらを見た。
やがて医務室に着いたが、その扉で待ち伏せのように立っていた及川の相方・岩泉の第一声も正しくそれだった。
「…なんだ、この組み合わせは」
彼は、次いで、天海と及川を見ると、思い切り顔を顰めてこうも言った。
「おい、及川。こんなタイミングでもナンパかよ…!」
「えっ、ちょっ、岩ちゃん、なんか壮絶勘違いしてない⁉︎」
慌てる様子で及川は言い、天海の肩に両手を置いた。
「この人、白鳥沢の、えっと、天海さん! 通りすがりのいい人で――」
「及川さん、私、白鳥沢の生徒じゃありません」
「及川、離れろ」
及川の釈明を天海が遮り、そこに俺の及川への注意が重なる。
岩泉が当然のように、まったく事態を飲み込めないという顔をした。
その段になって、廊下の先から教師と思しき人物がやって来ると、天海は俺たちから離れ、やって来た男と共に付き添っている女生徒を連れて医務室に入っていった。
後に残された男4人は、ひとまずは無言で「医務室」のプレートを見上げていた。
それがたっぷり30秒ほど続いてから、沈黙はこの辺で十分とばかりに岩泉が大きく息を吐いた。
「…で?」
両手を腰に当て、彼は相棒たる男に事の次第を尋ねる。
「なんでうちの生徒がこんなことになってんだよ」
「さぁね」
及川は両手を広げて外国人のようなジェスチャー。
「女バレ目当てに来てた大学生? よくわかんないお兄さんが、好みの女の子見つけて間違ったアタックした、それがたまたまうちの生徒だったみたい」
「いい迷惑じゃねーか」
「ホントに。まぁ、打たれた子にしてみれば、そんなあっさりとした言葉で片付けられる話じゃないんだろうけどね」
打たれた、と言ったところで思い出したように及川が俺たちを振り返った。
「さっきの、天海さん、牛若ちゃんたちの生徒じゃないの?」
「違う」
俺が簡潔に答え、天海の学校名を伝えた。
そこで天童が情報を付け加える。
「若利くんの彼女だから、手ぇ出すと後が怖いよー」