第7章 ちいさい秋見つけた(3)
準々決勝はフルセットの攻防になった。
序盤から点の取り合いになり、俺は向こうのWS2人と競うように得点を重ねていった。
両者の間にそれほどの実力差はなかっただろう。
あったのはセッターの性質の差だ。
あちらは選抜チームだったが、まるで既存チームのような多彩な攻撃を繰り広げてきた。
「及川みたいだよね…相性最悪ッ」とは天童の言。
ブロックが左右に振られることが多く、俺たちは第1セットを落とした。
「賢二郎、しばらく休め」
鷲匠監督はそう言って、セッターを白布から瀬見へと変えた。
3年とのコンビネーションに対する熟練度は瀬見の方が上だ。セッターを白布から瀬見に変えるということは、積極的に俺以外へボールを振れとの監督からの指示に等しい。
「英太、若利にボールを集めるスタンスは変わらんからな」
監督はそう言っていたが、俺一人で通用するならセッターを瀬見に変えたりはしない。
俺は自分の力不足を認識しながら、第2セットに臨んだ。
白鳥沢はその第2セットを接戦ながら物にすると、続く第3セットも数度のデュースを経た上で勝利を収めた。
振り返れば、相当にタフな試合となった。
「今日はもう帰りたいっ。疲れたわー!」
「お前はほとんど試合に出なかったろうが」
昼食後のミーティングが終わると待っていたかのように天童が弱音を吐いたが、瀬見は取り合わない。
午前の試合の功労者は誰であろう瀬見なのだが、本人は満足している様子はなかった。
それどころか、次の準決勝でまた白布がスタメンであることを聞き、悔しがっているように見えた。
「若利へのマークを考えるとここからが正念場だ。天童、お前ももうちょっとスパイクとブロック決めろ」
「出てる時は決めるようにしてるってば」
「それよりもレシーブだろレシーブ。さっきの試合はレセプションにディグ、甘かったと思うぞ。後半、もっと声出し必要だったんじゃないか?」
「ライン際のジャッジにもう少し正確性が欲しいな」
観客席で前後に分かれて座りながら、俺たちは2年だけで簡単な反省会を始めている。
そんな中、
「牛島さん」
とロビーから戻ってきた川西が声をかけてきた。
俺よりも先に天童が反応する。
「なに、太一」
「そこで、牛島さん呼んできてって言われたンっスよ」
「誰?」
川西は首を横に振った。
「さぁ。牛島さんのファンっぽいですよ」