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【HQ/R18】二月の恋のうた

第6章 ちいさい秋見つけた(2)


俺はもう1度、メールを最初から最後まで黙読する。
好きです。
再読してもここの部分で止まってしまったが、細かいことは気にせずに天童の質問に簡潔に答えた。

「現地に着いたか、と聞かれた。それと、明後日の試合を楽しみにしているとも。俺のストレートに期待しているそうだ」
「ストレートに…? クロスは?」
「何も言っていない」
「…なんか、天海さんって見るところマニアック…」

そんなことを言ってから、天童は、後ろからやってきた白布に声をかけた。

「賢二郎、明後日、若利くんはストレート中心にしてあげて」

一瞬、白布は怪訝そうな表情を覗かせた。
が、今大会から正セッターとして起用されることが既に告知されているこの1年は、動じることもなく冷静に切り返した。

「…相手のローテ次第なところがありますから、様子を見ながらですが」

瀬見が、何か言いたそうな顔で白布を見ていた。

「若利の彼女って」
と、山形が、俺を中心に立ち止まりかけている面子に歩き出すよう目で促しながら、
「ストレートとクロスの違いを見分けながら観戦してんのか? バレー部でもないのに」
と言う。

広い、空いているコンコースを改札まで進みながら俺たちは話す。

「さっきの話だと元・弓道部だっけ? 目は良さそうだな」
「遠的とかしてたら細かい違いが気になったりするのかね」
「目、でかかったよな、若利?」

瀬見に振られて、首を縦に振る。

「目は大きいな」
「小顔だから目がでかく見えんのかもだけど」
「やけによく見てるね、英太くん」
「その辺で止めとけよ、着火マン天童」

瀬見のやんわりとした牽制。
俺は気になった部分に言及する。

「…小顔なのか?」

真後ろで話を聞いている白布が突っ込んできた。

「小顔じゃないですか、牛島さん」
「どこ見てるんですか、って賢二郎が言ってるよ」
「言ってません」
「胸は大きそうだったよな」

山形の一言で全員が口を噤んだ。
俺を除いては。

「胸、大きそうだったか?」
「賢二郎、出番!」
「俺、よく見てないのでわかりません」
「ズルい!」
「スタイル良かった、の一言で済ませとこーぜ。それ、割と微妙な話題だろ」

瀬見が俺を見て言う。

「スタイル云々はわからないが…」と俺は前置きしてから言った。

「綺麗だとは、思った」

なぜか、今度こそ誰も何も言わなかった。
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