第6章 ちいさい秋見つけた(2)
9月下旬。
インターハイから約1か月半後、国体は開催される。
国体はインターハイ同様に毎年開催地が異なる。俺たち白鳥沢バレー部員の大会での移動は基本的には学園のバスを利用して行われるが、今回の国体のように遠隔地へ向かう場合は飛行機や新幹線といった他の交通機関も当然利用する。
「やっぱ、新幹線で移動っていいよねー」
降車駅のホームで大きく伸びをした天童が言う。
俺も頷く。
バスや飛行機に比べると、電車での移動は外的要因による影響を受けづらい。何かあった時のリカバリーが効かせやすい点もメリットだが、なんと言っても車内での行動が制限されないのが精神的に楽だ。
「点呼取るぞ」
先輩たちから指示を受けたのか、添川がバッグを肩に担いだまま言いに来た。
大平が同じことを後ろに固まってる1年に伝える。
その間にも、天童はホームの時計を見上げながら、真後ろの瀬見に尋ねていた。
「今日って、荷物持ったまま練習に直行だっけ?」
時刻はまだ午前。
練習があるのは確実だが、宿泊用の荷物をどうするのか、ここが焦点だ。タイムスケジュールは、宿泊地や借りる練習場所によって毎回変わるため、部員同士でも常に確認しあっている。
「そのまま借りてる高校の体育館に直行。調整してからホテルにチェックイン、夕食後にミーティング」
「英太くんは歩く『旅行のしおり』だね」
「お前はいつも他人任せだな…」
瀬見の呆れたため息に天童は悪びれもせず笑った。
「そういえば、若利、天海さんと会ったりしないのか?」
瀬見が思い出したように俺に尋ねる。
先月の学食での1件以来、事あるごとに彼女の話題が口に上る。「天海」という名前も、瀬見に限らず誰もが頻繁に口にするものだから、部員全員の知り合いのような錯覚に陥りかけていた。
「何も決めていない」
そこまで言ったところで、俺は大平の視線に気づいた。
「…明後日の初日に俺たちの試合を観に来ると言っていた」
昨日、大平に言われて投げたメールの答えを補足として述べてみた。
「具体的な待ち合わせとかは決めなかったのか?」
「あぁ」
そもそも、直接会わなければならない理由などないのだが…そこは省いて、俺は天海から与えられた情報を追加する。
「当日の午前中は他の競技の応援にも行くらしい」
「他の競技?」